本日は毎年一年で最も楽しみにしている日です、そうですオールスター前夜祭=NBAダンクコンテストの日であります。
しかしこの世は何と非情なものか、そんな日の午後から明日の仕事に備えて前入り県外出張が入るという悔やんでも悔やんでも悔やみきれない展開、「一体この世の神は何をやってるんだ!脳無しか!」とベッドにサイコクラッシャーかまして嘆いていたんですが、午前中に先方から電話があり、
「天候と風の影響で延期になりました。」
生まれてこの方神を疑ったことなんてありません、どうもみなさん私です。
今年は事前にダンクコンテスト参加者の分析記事を書いておりませんので、いきなり本戦解説に入ってしまうのですが、とりあえずコンテスト直前にツイートしたコレで許して下さい。
優勝候補は間違いなくラビーン、今年は飛距離系が見たい、他コンテスト向けであるのはゴードン、360と股抜き辺りの複合を見せてくれそうな予感、バートンはリバース、ウィンドミル辺りから変化をつけるか、ドラモンドはゲームタイムよりな気はするがコンテストならではのアイディアがある事を期待。
— cata.@NBA (@nba_carter2) 2016, 2月 14
ザック・ラビーンは昨年飛距離系のダンクを見せておりませんでしたが、NBAデビュー前にフリースローラインからウィンドミルを披露してましたし、違うネタがあるとすればソレだと思っておりました。
そしてアーロン・ゴードンは今回の参加者でラビーンに続き過去にコンテスト向けのダンクを見せていたパワーダンカー、高校時代にも360からの股を通すBTL(Between the legs)などこなしていたので今回も難易度が高い技を見せてくれると確信していました。
ウィル・バートンはインゲームでもダブルパンプリバースや高さのあるダンクを見せていましたので、コンテストでもリバース、もしくはウィンドミルからの変化をつけた技が期待できるかなと。
アンドレ・ドラモンドはコンテストに関してはほぼ未知だったので、ウィンドミルを過去に決めている事はありましたがビッグマンでもドワイト・ハワードのような滞空時間はなかったので、何かしらアイディア系で勝負する可能性が高いと見ていました。
と簡単な今更分析をした所で、肝心のコンテストですが…
本当に素晴らしかった、これ以上の結果は無いというぐらい最高の内容だったと思います。
今回ジャッジとなったのは、アイスマンことフィンガーロールの使い手として活躍したジョージ・ガービン、そしてブロックの達人&ダンクコンテスト大好きのディケンベ・ムトンボ、2000年代を代表するスコアラー、トレイシー・マグレディ、ムトンボ同様ダンクコンテスト大好きのレジェンドセンター、シャックことシャキール・オニール、そして史上最高のPGと謳われるレイカーズレジェンドのマジック・ジョンソンの5人でした。
それでは一から解説していこうと思います、まず先行のバートン。
一投目は、片足跳びからのBTLリバース、2000年にリッキーデイビスが見せたものと同じ外側から通す形でした。
昨年のオラディポ同様登場の際に謎のスリラーパフォーマンスで若干滑っていた感はありましたが、ダンクは1stトライで成功。
スコアは初め6 10 8 8 8とマジックが6を出した!?とまさかの点数かと思われましたが、直ぐに訂正され8 9 9 9 9の44点、難易度もそこそこありスムーズに決まりましたが、あっさりしすぎていてインパクト不足により点数は伸びず。
続くドラモンドはエンドラインからアリウープで反転しながらBTLにトライしましたが、惜しくも決める事が出来ず、最終的にクラッチを少し入れながらワンハンドアリウープに修正、彼の持ち味であるパワーを活かせず36点でした。
そして、コンテスト向けダンカーと期待していたゴードンが見せた一投目は両足跳びでの360からBTL。
一発目で成功させたものの、オール9点の45点。
モーションが小さくまとまってしまってしまったからか誰も満点を出しませんでしたが、360に加えて股の下を通しても満点が取れない時代になったのだな… と、これを見た時時代の変化を感じました。
最後の試技者は昨年の王者であり優勝候補のラビーン。
ここまで会場もまだ盛り上がりきっていなかった中、一気にその目を覚まさせた男。昨年の一投目と二投目と複合したようなアリウープから背面を通しながら反転しダンクで満点を記録。
高さは抜群、加えて非常にシャープな腕の振り、そして空中でのモーションの滑らかさが際立ち、1年前のように今年もラビーンの独壇場かと思われた1stトライでした。
そして続く予選2投目。
まず一投目で最低得点だったドラモンドが登場、ここで何と2005年にチームメイトのアマレ・スタウダマイアーに見事なヘディングアシストを決めたスティーブ・ナッシュが助っ人で参加、得意のサッカー技であるヒールリフトからあげたトスをドラモンドがウィンドミル。
数度トライしたのと、やはりドラモンドならではのパワーは活かせず二投目も40点に届かず39点、惜しくも決勝進出はなりませんでした。
続くバートンは一人アリウープから2000年にカーターが披露したリバース360のウィンドミルをトライ。形としては2009年の予選一投目でドワイトハワードが見せたものに近いダンクで、決まれば高得点が期待できる技でしたが決めることができず、2ndオプションのシンプルなワンハンドアリウープに変更したものの、リムに嫌われ30点。一投目でゴードンより1点劣っているためバートンも予選敗退が決まりました。
この時点で決勝はゴードンVSラビーンが決まったわけですが、ここから会場のボルテージは一気に上がります。
ゴードンの予選二投目は、マジックのマスコット、セグウェイに乗ったスタッフ・ザ・ドラゴンをゴール下にボールを掲げながら直立させ、その上を開脚で跳び越えるプロダンクチームのTeam Flight Brothersで「ダブルアップ」と呼ばれている技、そこにBTLを足す高難易度ダンクでした。
これを二度のチャレンジで見事に成功、このダンクはフープと頭が並行になるぐらいの高さを誇り、更にゴードンならではのパワーも加わり迫力のある一発となりました。
近年ではプロップ(道具)を使ったアイディア系ダンクに偏ったり、単純なスキルよりもどう魅せるかに焦点が当たっていた面のあったNBAダンクコンテストですが、今回のゴードンはセグウェイに乗ったマスコットに協力してもらった上で難易度が高いダンクを決める、正にNBAのコンテストで披露するダンクとしてはうってつけの1本だったと思います。更にマスコットはそのチームの象徴とも言えますから、この大舞台でマスコットからアシストを頂くというのはチームのアピールにもなり本当に最高の演出だと思いました。
ゴードンはBTLだった事もあってか着地後、2000年にカーターが見せた両手突き上げポーズも見せ、コート横で見ていたラビーンも頭を抱えるほどのインパクトがありましたが、何と点数は49点。
シャックのみが9点を出し、会場からは大ブーイング、私も何が減点対象だったのか理解に苦しみましたが、一つだけあげるとしたら一度トライしてミスをしていたからというぐらい。
これにはツイッターでも世界中の視聴者が「意味が分からない」とのコメントが溢れ、解説のチャールズ・バークレーやレジー・ミラーもシャックはマジックが嫌いなんだ、マジックの永久欠番にならなかったからと理由を掘り下げてましたが謎のまま。当の本人シャックは何が悪いんだという素振りを見せておりました。
このダンクは仮に一度ミスをしたからと言っても、100人いたらほぼ100人が10点を挙げる一本と言っても過言ではないものでした。それは会場全体、そしてオンライン上のファンが全てを物語っていたと言えます。私が審査員でも10点を出したでしょう。なぜならシャックが9点を出した時点でPCモニターの前で「え!?」と言ってしまったぐらいですから。
シャックの謎の判定で惜しくも満点には届かなかったゴードン、しかし彼のポテンシャルの高さが遺憾なく発揮された一発に決勝でのダンクが大いに期待される展開となりました。
そして予選最後の一投を控えたラビーン、お次は何を魅せるか注目が集まる中彼が用意したダンクは… バックコートから助走を取り、フリースローラインから踏み切ってのワンハンドアリウープ。
一度目のトライでは完全に右手一本ホールドしリムの根っこに当ててしまいましたが、二度目は両手キャッチからワンハンドに切り替えるスタイルで決めてきました。
これも飛距離も高さもあり満点が期待されましたが、再びシャックのみ9点。シャックに再び大ブーイングが鳴り響きましたが、この一発に関しては私個人的に9点でもおかしくはないと思いました、決まったダンクもラビーンならではのシャープさはなく、空中での姿勢も若干乱れ気味に映りましたので致し方ないかなと、点数が出る前に解説からこれは50点ダンクではないとの声も上がっていましたしね。
この時シャックは間違っていないと私も思ったのですが、実はシャックは彼にカメラがフォーカスした際に右手人指し指を突き上げて何かを言っていたのです。
そして私はこの時ツイッターを使いながら動画付き実況ツイートをしていたのですが、ある方が非常に鋭い点を突いたツイートをしておりました、それがコチラ。
< シャックは一回目で成功させたカーターをリスペクトしてるんだよ、わかったかお前ら。
予選でブリブリ50点出してインフレしないようにしてるんだよ、わかったかお前ら。
…多分ね。
— ズントスピN夫 (@Mad_nba) 2016, 2月 14
ツイッター上でNBAファンの間で著名であるN夫さんのツイート、つまりシャックはどれだけ難易度が高くとも一度ミスしたダンクに満点は上げられない。という指摘。
シャックは2000年にカーターが伝説のパフォーマンスを披露した際コートサイドでビデオカメラを回していました。そしてシャックがカーターの一投目を見たその時の彼の表情は今でも忘れられません。そして後に一緒にプレイしたいプレイヤーは誰かの問いに対し、レイカーズ時代のシャックはカーターの名を挙げておりました。
シャックがカーターをリスペクトしている事はほぼ間違いない事実であり、その年のカーターは全ての試技をノーミスでこなしていたのです。だからこそ今回高レベルで争う二人に甘いジャッジはせず厳しく判定を下した可能性が非常に高いのでしょう。なおリアルタイムでその瞬間を見逃していましたが、ミラーがシャックが映された際に「シャックは1発で決めないものは減点してるんだ」と言っていました。このタイミングでいち早く気付いた、素晴らしい解説者です。
ゴードンの際はシャックがマジック嫌いと言う理由などを挙げられましたが、ラビーンに対しても9点を出した時点でその可能性は消えたわけです。コレはN夫さん同様NBAファンの間で著名であるマジックファンの六伍壱さんも指摘しておりました。
そしてそのシャックの「1回ミスしたら満点は出さないジャッジ」は続く決勝戦で証明される事になるのでした。
予選で圧倒的なパフォーマンスを見せたゴードンとラビーン。決勝も素晴らしいものになるという期待は膨らみましたが、その結末はそれすらも凌駕する驚きの連発となりました。
決勝一投目の先行は予選でラビーンよりも低い点数であったゴードン。
今回もマスコットのスタッフを連れサポートありのダンクとなりましたが、何とスタッフはボールを保持したままセグウェイで回転、助走を取ったゴードンはうまくスタッフの持つボールが踏み切り位置に来るのに合わせて跳躍、右手一本で手首に包み込むようにボールをホールドし、カール・マローンのメイルマンポーズを左手で行いながら360ウィンドミル!!!!!!!!
文章がすごく長くなってしまいましたが、それだけ内容が濃すぎた一本でした。この片手だけで行うアリウープスタイルのウィンドミルはスクープと呼ばれ高校生ダンカーであるクウェイ・パーカーが得意とし、TFB始め頻繁に見られるようになったダンクではあるのですが、セグウェイに乗って回転するスタッフから受け取るというアイディアは最高かつインパクト特大の初見ですし、ゴードン程の体格を誇るダンカーはストリートではほぼいませんから、パワーもあり強烈な印象を与える1本となりました。更に1人アリウープで行うバウンドからのスクープは落下するボールを下から受けるためやり易いですが、今回のゴードンは横から来るボールを上から包み込むというかなり難易度が高いスタイルでした。それを見事一発で決め切った、今回で特に評価したいダンク一本をあげるとすれば私はコレを選びます。
これには先ほどまで9点を出していたシャックも納得の10点満点、トータル50点で幸先の良いスタートを切る結果となりました。
対するラビーンの一投目はゴードンが行ったスクープの360ウィンドミルと同スタイルの片足跳びバージョン。もしかしたら対抗心を燃やしたのか、回転の勢いを生かしたまま叩き込んだためスピード&力強さがありこちらも満点。
ラビーンは昨年も含め完全な360にはトライしておらず今回が初のフル回転だったわけですが、腕の旋回だけでなく身体の回転速度も素早く、彼のポテンシャルの高さをまざまざと見せつけられた一発となりました。
お互いに一歩も退かず続く二投目、ここでゴードンが繰り出したのは本日のベストダンクと称されるものでした。
再びマスコットのスタッフをフープ近くにボールを持って立たせたゴードンは右45度から跳躍、そしてダブルアップから両足の下を通し左手でフィニッシュ!!!!
このダンクはNBA外ではTFBのJus Flyことジャスティン・ダーリントンの十八番で既出のものではありますが、NBAでは史上初で真新しさもあり難易度も最高級。そのダンクをワントライで成功させたゴードン、二連続で満点を叩き出しました。
ここで2000年にカーターのダンクを見たケニースミスが叫んだフレーズ、
「It’s over ladies and gentlemen!!」
からの
「Let’s go home!!」
「もう決まった!皆家に帰ろう!」が飛び出しました、そう、普通なら正に決まったと思えるスーパーダンクではあるのですが…
今年は終わらないのです、それ程最上級の対決なのです。
控えるのは昨年の覇者、ラビーン。
昨年は決勝で勝利が濃厚となったからかネタを温存した様子がありましたが、今年はゴードンという最強の好敵手を目の当たりにし、全くその余裕はなくなりました。
満点が延長戦への条件となったこの状況でラビーンが見せたのは…
フリースローラインからのウィンドミル。
そうです、昨年見せてくれるかと私が期待していたフリースローラインから踏み切ってのウィンドミル。
NBAデビュー前にコンテストで決めていたダンクでしたので、必ずどこかで出してくると思っていましたが最後の最後、正にここ一番という所で披露してきました。こちらもゴードンに続き一発成功。
フリースローラインからのウィンドミルと言いますと、かつて記事でも取り上げました伝説のフリースローラインダンカー、ジェームズホワイトを想起しますが惜しくもホワイトはNBAのコンテストの舞台ではこのダンクを決めきる事が出来ませんでした、そのダンクをラビーンは完璧な形で絶対に外せない場面で決めてきたわけです、ラビーンは身体能力に加えメンタルも相当タフだなと思わされましたね。
こうなりますともう会場は大盛り上がり、決勝でお互いの二投が全て難易度が高い上にノーミスで満点。これ以上ない筋書きとなった頂上決戦。
延長へと突入することとなった二人は、ネタに困りかけて来てたのはあったかもしれませんが、まだまだショーは終わりません。
先行のゴードンはチームメイトのペインを連れベースラインからボード横へアシストさせ、ウィンドミルでのリバースを炸裂。
このダンクもまた一発で成功。叩き込まれた時の音が「ドキャッ!」という80年代にマイケル・ジョーダンと熱いバトルを繰り広げたパワーダンカーのドミニク・ウィルキンスのような物凄い金属音を響かせる力強いダンクとなりました、もちろんモーションもブレがなくスピードも十分。
ゴードンは今シーズンにインゲームでもダブルパンプでのリバースダンクを披露していましたが、そのダンクがドミニクのダンクと称されていたので確かにドミニクと通じるものを持っていると思います。何よりゴードンは左足→右足の両足踏み切りの右利きダンカーであり、つまりドミニクと全く同じスタイルのダンカー。今回のゴードンは正に進化したドミニクを見ているような心境でした。彼はウィンドミルのパイオニアとして知られ、尚且つリバースダンクの名手でしたから、今回のゴードンのウィンドミルリバースは2016年版ドミニクと呼んでも良いと思います。
既にこの時点で三連続満点と例年であれば文句なしの優勝となっている状況ですが、再び王者ラビーンが立ちはだかります。
ラビーンはボード裏側に移動し、フープ下にバウンドするようにボールをトス、そしてフープ裏から跳躍しBTLから両手リバースでフィニッシュ。
ラビーンとしては難易度が高い部類には入らない技だったかもしれませんが、彼特有のボールをキャッチしてからの腕の旋回速度はやはり迫力がありこちらも満点で何と勝負は延長二発目に突入。
決勝四本目となったゴードンは一度ショットクロックにボールを跳ね返したものの、ダンク動作には入らずネタを変えベースライン側に移動。ここでゴードンはドミニクが得意としたダブルパンプリバースの進化版を炸裂。
通常ではそのまま股下までボールを下げますが、彼は一度後頭部にボールを振った後に股下までボールを下げたのです。これもNBA史上初となるダンクで入り方もパーフェクト。またしても高得点が期待されましたが高難易度が続きインパクトに欠けたように映ったのか、得点は47点。
優勝候補筆頭であったラビーンに対し、大健闘どころかラビーンを上回るほどのパフォーマンスを見せてきたゴードンでしたが、ここでラビーンに二連覇のチャンスを与えることになりました。
そして、ラビーンのファイナルダンク。ラビーンは既にこの時点でネタに困っていたようでしたが同じ試技者であったバートンと打ち合わせ、提案されたダンクは…
フリースローラインからのBTL、ラインを足一歩分ぐらいはみ出しはしたものの十分な飛距離&滞空時間から繰り出されたダンクは50点を記録。10年以上前にホワイトが成功させている技ですが、NBAでは初見かつ超高難易度。これは満点を出さざるを得ない極上の一本。
そして正に頂上決戦と呼ぶにふさわしい激闘を制したのは、ザック・ラビーン。
大方の予想通りの結果となったわけですが、内容としてはゴードンが劣っていたことは全くなくむしろ総合のインパクトでは上回っていた。ただ一本のダンクにつき50点以上は出せないルールだったのが敗因とも言える程のパフォーマンスでした。
ダンクコンテストは毎年大盛り上がりというよりかは、ズバ抜けた一人が現れるか、全体的に不完全燃焼に終わるかという年の方が目立つ傾向にあると思うのですが、今年程素晴らしい競争があり、その一本一本が超高難易度というのは今改めて動画を振り返りましても信じがたいです。
今回のゴードンとラビーンは決勝に至ってはお互いに全て一度の試技で成功。全く激闘に水を差すことなく興奮が続き、何より本当に素晴らしいと思ったのは、昨年はラビーンが決勝で余裕で勝利できる展開だったため技を温存した流れになりましたが、ゴードンがラビーンの全てを引き出した所。
延長一投目でも決着がつかなかったのが、ラビーンのフリースローラインBTLにつながったと考えると本当に鳥肌モノですね。
ラビーンはラストダンクについて一度もトライしたことがなかった、とコメントしていましたが、2000年のカーターもマグレディーからのアシストで股下を通したダンクは「夢の中で自分がトライしていたのを見た、リアルでやったのは初めて」と言っていました。初トライで見事な完成度を披露してしまう二人は本当に別次元のダンカーであると感じます。
また、今回のコンテストを盛り上げた要素として忘れてはならないのは予選で謎の判定を下していたシャックの存在。
SBNationの記事にもありますがシャックは一度ミスしたダンクには満点をあげないジャッジをしているという空気が漂ってからは、ゴードンもラビーンも一度もミスをせず完璧に残りの試技をこなして来ました。そこにはシャックの厳しい判定が生んだ緊張感があったからこそと言えるのかもしれません。そしてシャックは決勝での二人のダンクに全て満点を出していました。
ちなみにシャックが良い審査員かと問われましたら私はNOと言いたい所です。仮にシャックが5人審査員だったとしたら、ゴードンとラビーンのあのダンクは9×5の45点だったわけです。流石にそれは首をかしげざるを得ないでしょう。
しかし審査員は一人一人見るポイントも異なりますし、それだからこそ面白い。ですので今回のシャックの存在はとても貴重だったと思いますし、結果それが今回の名勝負につながったと思います。
2000年のコンテストでケニー・スミスがカーターの二投目に対し9点をつけた事がありましたが、彼は一本目で凄さのハードルが上がりすぎたから二投目は9点と語っていました、確かに二投目は一投目のダンクと走り込む角度が違うものの類似したダンクだったのでそれも理解出来る流れではありました、そしてカーターはスミスに自身が目標にしていた5本全て満点の夢を断たれた直後の三投目に、先ほども挙げましたマグレディからのパスを受けた股通しダンクを決め、彼に「It’s over!!」と言わせたのです、今回の二人も9点を出したシャックに納得させるダンクを決勝でお互いに4本全て決めた、コレは本当に見事な展開でした。
更に私が今回の熱戦を見ていた感じたのは、今年は今までの過去の素晴らしかったコンテストの魅力が詰まったコンテストだったという事。
1988年の伝説のジョーダン対ドミニクは有名なバトルでしたが、今回競い合った二人は片足跳びを中心としたフリースローラインからのダンクを武器にしたラビーン、そして先ほども挙げました左→右からの両足跳びでのダンクを得意とするゴードン。これは正にジョーダンとドミニクのスタイルと一致してまして、ジョーダンは両足跳びも要所で使っていたので完全にというわけではないですが決め手となったダンクに置いてのスタイルで考えますと、新世代ジョーダン対ドミニクここに在りといった印象でした。ダンカーとしての特徴も当時の二人を彷彿させる内容でした。
そして今回はラビーンとゴードン共に過去に例の無い超高難易度のダンクを決勝の舞台で次々とノーミスで成功。2000年のビンスカーターを想起させるようなパーフェクトパフォーマンス、カーターが2000年のコンテスト前に語っていた「史上初の全ダンク満点達成者になりたい」との言葉を二人とも実現する寸前の領域に達していたと思います。
次に挙げたいのが、お互い一歩も引かず決勝で延長戦に突入したという事。これは2006年にネイト・ロビンソンと当時76ersに所属していたアンドレ・イグダーラの激闘を思い出しました。ネイトのスパッド・ウェッブ越えやイグダーラのアリウープからの背面通しダンクと正に互角の闘いで盛り上がった年でしたが、今年はあの熱い戦いのレベルが更に上がった印象を受けた死闘と言えるでしょう。
そして極め付けは2003年のJRich対メイスンの真の王者決定戦、JRichが49点以上出さなければいけない最後で前代未聞のリバースでの股通しを決め逆転勝利。今回もラビーンが48点以上最後に必要といった場面で見事に史上初となるフリースローライン付近から踏み切っての股通しを成功させ優勝。ちなみにこのダンクはジョーダンがダンカーとして脚光を浴びていた時代、ラストダンクにふさわしい一本というイメージがあり、その進化系で今回締めたというのは正に最高の結末だったと思います。
以上、総合評価としまして今年のダンクコンテストは間違いなく史上最高のものであったと思います。
近年NBA外のプロスラムダンカー、Team Flight BrothersやDunkademicsのyoutubeチャンネルで取り上げられるダンカーが次々と難易度の高い新技を披露していますが、彼らはダンクのプロであり、ジャンプするためのコンディション調整に集中できるわけですが、NBAプレイヤーというのは本職はバスケットボールですので厳しい練習をこなしながら数多くある試合スケジュールを戦い抜かなくてはなりません。その中で高い跳躍力をキープするというのは非常に大変なことだと思いますし、その状況でプロスラムダンカーも毎回決めれるとは言い難い高難易度のダンクをゴードン&ラビーンお互いに安定して決めたというのは純粋に賞賛に値します。
更に強調したいポイントはNBAのダンクコンテストというのは世界中のバスケファンが注目する舞台なので、緊張感も相当なものだという事。今回ラビーンが繰り出したダンクは2013年に期待されたフリースローラインからのダンクを得意としたホワイトが本来決めていたであろうと思われるダンクでしたが、ホワイトは肝心のNBAのコンテストの舞台で実力を発揮できなかった… ホワイトに限らず今まで数多くのプレイヤーがその雰囲気に呑まれる中、今回の二人は楽しみながら堂々と技を披露していました、その姿が今回大きな感動につながったわけですね。
ちなみに洗練された一発という意味では今でもカーターのリバース360ウィンドミルが最高だと思いますし、最高の逆転勝利という意味ではリチャードソンのダンクを推したいですし、最も感動したのは2006年であった事は私の中では変わりませんが、今年ほど熱い要素が揃いに揃ったコンテストというのも他にないというのが正直な感想です。本当に素晴らしすぎるコンテストでした。
決勝でお互いを高め合うラビーンとゴードンは本当に良い好敵手だったと思いますし、何より二人とも笑顔で楽しんでいたのが印象的でした、ラビーンもゴードンと競ったことにより最高のダンクが出来たとコメントしていましたし、今回に関しては二人とも勝者と多くの方が理解していることでしょう。
そして今回の試技者の内、肌の色で判断しますと黒人であるドラモンドとバートンが予選敗退し、半分白人の血が流れているゴードンとラビーン(2人とも父親が黒人、母親が白人)が圧倒的なパフォーマンスを見せたという事を考えますと、人種による身体能力の差というのも徐々に無くなってきているという印象を受けました。それは私たち日本人にとっても例外ではないと思いますね。
NBAダンクコンテスト2016まとめ↓
ラビーンとゴードン二人ともネタ的に完全燃焼した感があるので来年の展望は謎ですが、また二人の熱い対決が見れる事を期待したいですね。まだまだ進化した姿を見てみたい、そしてラビーンは史上初の三連覇達成にチャレンジして欲しいです。
というわけで、最高のパフォーマンスを見せてくれたラビーン&ゴードン、そして予選で敗れはしたものの果敢に高難易度のダンクにチャレンジしてくれたバートンとドラモンドにありがとうと言いたいです。
今年も最高に興奮した前夜祭でした!!それでは。
- ブログランキングに参加しています、記事に価値を感じましたら下のバナーを応援クリックお願いいたします。 -