キャブスがチャンピオンに王手をかけるか、はたまたウォーリアーズがシリーズをタイに戻すか、第3戦に引き続き再びキャブスのホームクイックンローンズアリーナで行われた注目の第4戦は、ウォーリアーズが19点差リードで快勝する形となった。
ウォーリアーズを指揮するカーHCは、出だしからイグダラ、バーンズ、グリーンと三人のフォワードで構成したスモールラインナップのフロントコート陣で奇襲を仕掛け、速い展開からのトランジションオフェンスでキャブスを翻弄した。
第1Q、立ち上がりこそレブロンからのノールックパスでモズコフのダンク、シャンパートの3などでスタートダッシュに成功したキャブスだったが、ウォーリアーズはカリー、バーンズの3、そしてイグダラのダンクなどでじわりじわりと点差を詰める。
試合が進むにつれキャブスはウォーリアーズのファーストブレイクにディフェンスを崩されてしまい、1Qで31点を献上してしまう、これぞ正にカーHCが狙った試合展開だった。
1Q終了時、カーHCは「サイズで劣るのは仕方ないが、リバウンドをしっかり取ってオフェンスにつなげれば良い、良いペースで試合を運べているよ。」とコメント、自信を覗かせた。
続く第2Q、キャブスはレブロンにボールを集めオフェンスを展開するが、頼みの綱であるレブロンのシュートがことごとくリムを弾く、ペネトレイトからもファールをもらえず、なかなかリズムを掴めない。
そして残り5分を切った所でレブロンにアクシデントが訪れる。
ようやくボガットからファールをもらえたが、着地の際にバランスを崩しコート外に転倒。ゴール下に構えていたカメラマンに突っ込んだ際カメラに頭を強打し側頭部を二箇所切ってしまう。
本来であればベンチに下がりしっかり治療をしなければならない程の出血だったが、応急処置を受け再びコートに舞い戻る事になったレブロン、正にギリギリのチーム状況を物語っていると感じざるを得えない瞬間だった。
ちなみに放送する側としては当然の行為なのだが、この時カメラアングルがレブロンの頭皮にこれでもかという程クローズアップしていたので、案外別の意味で心配したファンも多かったのではないだろうか、今は4K時代到来でディスプレイによっては細部までとてもクリアに見えてしまうのが逆にネガティブでしかないな、と個人的には感じた。
そしてこのアクシデントが更にレブロンの調子を狂わせたのか、FTをことごとく外し過去3戦で見せた驚異的なパフォーマンスとは程遠く精彩を欠いてしまう。
キャブスは、何とかモズコフとトンプソンがインサイドで粘りを見せるものの、スミス&シャンパートのバックコート陣のタッチがなかなか戻らず、更にディフェンスでもローテーションが上手く行かない、ヘルプが来ずイージーバスケットを与えるなどミスが続き、54-42と点差を縮められないまま前半を終える、このシリーズで初めてウォーリアーズがリードしたまま後半へ突入となった。
第3Qに入ると徐々にキャブスのディフェンスが機能し始める、オフェンスでもデラベドバの連続3、モズコフのインサイド、そしてレブロンのアリウープと一気に12-2のランで3点差に詰め寄るが、ウォーリアーズは点を取られた直後のトランジションですぐさま攻撃を仕掛け、なかなかキャブスにペースを掴ませない。
レブロンは、このQでもイージーショットを決めきれずなかなかゾーンに入る事は出来ないが、パッシングゲーム&リバウンドに絡みセカンドチャンスでチームに貢献する。
引き続き第4Qでも勢いに乗りたいキャブスだったが、レブロンがベンチスタートとなった立ち上がりはオフェンスの歯車がどうしても噛み合ずターンオーバーを重ね、ウォーリアーズにじりじりと引き離される。
2分経過した所でレブロンがコートに戻るが、JRスミスとシャンパートのアウトサイドがことごとくリムに嫌われ続け、逆にカリーに3を決められてしまう。
その後もウォーリアーズは細かいパスをつなぎ的確にオープンを見つけ、イグダラの3、リーのダンクと安定したオフェンスを展開した。
ここからキャブスの追い上げが見られる事はなく、数分を残した時点で主力はベンチに下がり、最終的に103-82でシリーズは2-2のタイとなった。
第3Qに追い上げは見せたものの、全体的にキャブスにとっては課題が浮き彫りになってしまう展開であったと言えるだろう。
ウォーリアーズのトランジションオフェンス
第4戦でカーHCは、試合前にスターティングメンバーについて「特に変えない」と発言していたが、センターのボガットを起用せずイグダーラを入れて来るというスモールラインナップで試合に臨んだ。
試合後のコメントで「嘘はついたけど、モラルに沿う事が必ずしも勝利につながるわけではない」と言い放つ辺りカーの策士っぷりが伺える、試合前に自ら作戦を露呈するような事はしないというカーの思惑通り、このラインナップが見事ウォーリアーズのペースに流れを持ち込む鍵となった。
ウォーリアーズはセンターを起用しない事により、相手のオフェンスが止まった直後すぐさまファーストブレイクに持ち込むランニングゲームでイージーバスケットを重ねる事に成功。
この試合ウォーリアーズと対称的にキャブスは、モズコフとトンプソンというビッグマンの二人が中心となってゲームを展開していただけにその効果は抜群、点を入れられた後もエンドラインからのタッチダウンパスで即ダンクにつなげる展開が要所で見られた。
この作戦が功を奏したのは、何と言ってもキャブスが実質7人のローテーションでプレーしていた事もあり、速い展開に持ち込む事でキャブスのチーム全体に疲労を重ねられた事だろう。
この展開は正に怪我人が続出しているキャブスにとっては何としても避けたいが、第4戦はその急所をピンポイントでついてくるカーHCの手腕にしてやられる形となった。
試合終盤ではベンチに戻る度に入念にアイシングするレブロン、デラベドバの姿がキャブスの負担の大きさを物語っていた。
対称的なキャブスのインサイド&アウトサイド
第3戦までも決して良くはなかったキャブスのロングレンジからのオフェンスがこの試合では更に悪化。
レブロン以外の得点源として奮起しなければならないバックコート陣、シャンパート、JRスミスの二人が完全に沈黙し、JRスミスにいたっては3が0/8と全くタッチを取り戻せず、トータルでも2/12と散々な結果となった、アービングに代わって大健闘を見せているデラベドバも3-14と試合を通して点を重ねる事が出来なかった。
ショットクロックが少なくなった状態で打つタフショットに限らず、完全にフリーでもネットを揺らす事がなくては流れを掴むのは至難の業だろう。
この第4戦では、チーム全体でペイントエリア外のシュート%が13%と今季最低を記録、3では14.8%と稀に見る大乱調。
しかしそれとは対称的に、インサイド陣はモズコフがキャリアハイとなる28点、10リバウンド、そしてトンプソンも12点、13リバウンドと共にダブルダブルを記録、ウォーリアーズがスモールラインナップで来た事によりインサイドを制覇出来たのも要因ではあるが、いかんせんチーム全体としてはバランスが良いとは言えない。
シリーズを通してキャブスの勝利の鍵として挙げられているアウトサイドからの得点だが、これが改善されない限り第5戦でも苦戦を強いられる事は容易に想像出来てしまう。
レブロンの疲労
第3戦までほぼ平均でトリプルダブルに加え41得点と驚異的なパフォーマンスを見せ続けて来たレブロンだったが、この第4戦では鳴りを潜めた。
やはりあまりにも一人で全てを抱え込んできてしまったためか疲労の蓄積は相当なものなのだろう、要所でフープ下までは潜り込むものの普段であれば難無く得点をあげる場面でボールコントロールする事が出来なかった。
フリースローもことごとく落とすなどシュートタッチ自体決して良い状態ではないが、それよりも下半身が動きに耐えきれなくなって来ておりバランスを失っているように見受けられた。
一見不運と思われる第2Qでのアクシデントも、試合後にボガットが「レブロンがカメラマンに自分から突っ込んでいった」とコメントする辺り、レブロンの疲労が生んでしまった転倒だったと言えるかもしれない。
レブロンはこの試合でも22点、12リバウンド、8アシストと多方面で活躍はしたものの、今のキャブスにはこれだけではまだ足りないチーム事情がある。
オールラウンダーイグダーラ
このシリーズを通してウォーリーアーズのキーマンとなっているのがイグダーラだ。
この試合でもレブロンに対して好ディフェンスを披露、これまでハイスコアリングを続けて来たレブロンを22点に抑える事に貢献しただけでなく、スモールラインナップが生むトランジションゲームをリードする要としては身体能力の高いイグダーラは正にベストフィットであった。
更に、キャブスが3を欲しいタイミングで逆にイグダーラが決めて来るロングレンジがキャブスの追い上げムードをことごとく潰した。
シリーズを通して好不調の波がなく要所で安定した活躍を見せているイグダーラだが、全てを高レベルでこなす事が求められているレブロンとは異なり、サポーティングキャストが充実しているウォーリアーズだからこそ余裕を持ってプレイ出来ているのは大きいだろう。
第4戦では今シーズンの自己最多となる22点、更に8リバウンドを記録した。
第5戦でも引き続きスターティングラインナップに名を連ねる可能性は非常に高い。
第4戦はキャブスにとって悩ましい一戦となった。
第5戦では対応策として、今まで出場時間が少ないマイクミラーやショーンマリオンを起用するべきだという声も挙がっている、両名ともそれぞれマブスとヒートで優勝経験があるだけに燻し銀の活躍を見せてくれる可能性は大いに有り得る。
第4戦では見事に修正を加えて来たカーHCに対しブラットHCがどう対応して来るか、両ルーキーHCの手腕が注目される。
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