先日のNBAドラフトでレイカーズから二位指名を受けたルーキー、ロンゾボール。
既にご存知の方も多いと思いますが、ラメロ、そしてリアンジェロと共にボール三兄弟として有名なバスケ一家の長男であり、類稀なバスケセンスを見せる来季注目の大物ルーキーです。
今オフには話題に上がる事の多かった彼ですが、なんと言ってもその一番の要因だったと言っても過言ではないのが彼の父、ラバーボールの存在。
「俺の全盛期ならマイケルジョーダンに1on1で勝つ事が出来た。」と豪語したり、ラバーボールのチームメイトであった白人選手を貶したと捉えられる発言をしたり、ステファンカリーよりロンゾの方が上手いと言ったり、レブロンの息子達よりウチの子の方が上手いと言ったり、とにかく炎上の元を挙げたらキリがない超ビッグマウス。
終いにはポッドキャストでカイリーアービングが、「ラバーボールは黙るべき、あとは子に任せれば良い」と発言した所、番組出演した際に「カイリーにはお母さんがいなかったよね、彼の家庭とウチは違う。ウチには母も父もいた。」と彼の意見に当てはめられる義務はないとばかりに反論。カイリーの母は幼い頃病気で他界していましたが、そこに触れデリカシーに欠けると非難を浴びました。実はラバーボールは家庭環境に問題があり母がいなかったと思っていて病気で亡くなった事は知らなかったとも言われていますが、いずれにせよ不謹慎な発言には変わりありませんでした。(ちなみにカイリーに対し「子供もいない彼に何が分かる」とも言っていましたが、カイリーは一児の父です。)
様々な不用意発言により一気に注目を集めてしまったラバーボール、そしてそのとばっちりを受けたと思われていたのが長男、ロンゾボール。
大事なNBAドラフトを控える中、父のトラブルでマイナスイメージがついてしまったと囁かれていましたが、
「実際ロンゾは父の事をどう思っているのか?」
との疑問が浮かび上がり始めたのです。
そして先月の父の日を機に、息子ロンゾボールが一通の手紙をPlayer’s Tribuneを通して公開…
以下、その全文和訳です、どうぞ。
〜ジムで一番声のデカい男へ〜
最愛なる父へ
ここ数ヶ月に渡って、アナタは僕に関してたくさんの事を話したね。
それは多分人々が望む以上のものだった。
父の日が迫っているけど、今回こうしてメッセージを送るのはアナタに少しの思いを伝える良い手段だと思ったんだ。
本当のアナタ、みんながTVを通して見ている姿では無く、僕の父として。
まず僕がアナタを通して最も憧れを抱いたのは、周囲がどう思うか全く気にかけないという事だった。
人々はアナタに対しどんな意見でも持つことができる、しかし彼らは全ての事実を把握することはない。
自分がそうであるように、彼らにとってもそれは訪れない。
父がリビングルームを片付け私達兄弟が普通の少年として遊べるようにしてくれた時、彼らはその場にはいなかった。
僕達が育って行く過程で毎日アナタが作ってくれていた一品の朝食の匂いで、彼らが目覚める事はなかった。
そして僕が常に授業でしっかり学んでいるか、高校を4.0GPA(日本でいう5、満点評価)で卒業できるかしっかりサポートしてくれた時、彼らはそこにいなかった。
でも、アナタはいてくれた。
これは特に誰かを驚かせる事ではないだろうが、僕が記憶している限りではアナタは体育館で最も声が大きい男だった。
それはチームをコーチしているか、もしくは観客席に座っているかは関係なかった。
僕はアナタが常に近くで見守っている事を知っていた、なぜなら僕にはその声がずっと聞こえていたから。
そしてそれはいつも変わらなかった、ただそこにいるだけじゃなく、アナタは共に参加してくれた。
僕が中学生だった頃、NBAプレイヤーになる夢を見始めたんだ。
マジックジョンソンのようなポイントガードになりたいんだってね。
アナタは如何にしてそこに辿り着くかを示してくれた。
ずっとアスレチックトレイナーとして生計を立てていて、今もそうであるアナタに僕は全信頼を置いている。
その代わりに、僕はその厳しいトレーニングを受ける事になった。
アナタの組んだスケジュールは僕の脳内に今でも深く刻み込まれている。そしてそれはこれからも続くだろう。
月曜、水曜、金曜はウェイトトレーニングに励んだ。
火曜、そして木曜は懸垂だ。
更にあの坂道だ、そうだよあの坂道だよ。
毎日、何が起ころうと、アナタはリアンジェロとラメロ(弟達)、そして自分を連れてチノにある私達の家の角からあの坂道を上り下りさせた、家に戻ればすぐさま腹筋だった。
アナタはいつでも僕達と共にあった、常に先導してくれていた。いつでもそこで追い込み、勇気付け、己の最善を尽くさない事は認めなかった。しかしそれを強制する事はなかった、アナタはその必要がない事を知っていたんだね。僕をよく理解していたから。
そしてモチベーションが必要だと感じた時には、如何にして僕のやる気を奮い起こすかを熟知していた。それは反復回数を更に増やすとかそんな事ではなかった、ただシンプルに「俺はお前が、それでは上にあがって行くことは出来ない、という事実を知っている事を願うよ。」とだけ言ってくれた。その言葉だけが僕が上達する上で必要な事だったんだ。
これからの生活がどうなるかはともかく、私は家族での試合への遠征を常に思い出すだろう。
アナタが前に母と座っていて、派手に音楽を鳴らして自分達兄弟は後部座席でテンションが上がっていた。
その道中は常にパーティーだった、でも帰りの車内は試合結果によって様々だったね。
アナタは絶対に”良い試合だった”とは言わずに、勝ったか負けたかに関わらず自分の改善点を見つけ出す事が出来た。何人かの人々はその言い方にうんざりしていたが、僕は常にどう言われたかではなく、何を言われたかが重要だと内で理解していた。なぜならアナタが蓋を開ける時は、常にアナタの言葉に真実が秘められているから。
僕はあの数年前のニューヨークから来たチームとの試合を決して忘れる事はない。相手は全員年上で、完全にサイズ負けしていた。だいたいメロが相手の誰よりも1フット小さかった。ひどいミスマッチで自分は相手のパワーフォワードを守るしかなかった。
あれは大方完全な負け試合になると予想するタイプのゲームだった、事実ほとんどのチームは20点差以内なら満足するようなものだった。
でも僕達家族は違ったんだ。
僕たちは終始ランをして圧倒し、3の雨を降らせ、プレスをかけ続けた、そして勝ったんだ。
あの帰り道は最高だったよね。
たくさんの人々がアナタが自分について話す事についてうんざりしやしないかと僕に問いかけて来る。自分のように内に秘めておいて、アナタも同じようにしていて欲しいって。
彼らが理解していないのは、アナタが公の場で僕について語っている事は家でも同じように今までずっと言って来ているんだって事。そしてほとんどの場合、アナタは正しかった。何年にも渡ってアナタはたくさんの不可能に見える事をさも可能かのように話して来た。ドラフトロッタリーの時もそう、レイカーズが上位3位に入った時も、家の周りを走り出し「みんな言ったろ!こうなるって!」と叫んだ、爆笑ものだったよ。
人々には見えないかもしれないけど、自分はアナタと同じ自信を秘めているんだ。(おしゃべりなのは全てメロが受け継いだね)事実自分がそれについて考える時、この自信が僕がアナタから受け継いだ最も重要な事だったって思えるんだ。そしてその違いは、それを自分は己のモノとしたという事。アナタが僕に教えた全てを僕は吸収しコートに置いて来る。コート上こそが自分の語る場所なんだ。
そのアナタが僕に感じている自信はより一層己を強くしてくれる。それは挑戦する事から決して逃げず、自分自身に誠実である事を教えてくれた。僕はこれをNBAという次の舞台に連れて行くんだ、自分は準備万端さ。例え何が降りかかってこようと、僕はアナタがずっと支えてくれる事を知っているからね。
アナタが今まで僕にして来てくれた事に対してまともに恩返しが出来た試しはない。恐らく車を一、二台なんて考えたけど、それじゃ物足りない。自分が最高の恩返しだと思っている事は、アナタが僕に思い描いたビジョンを実現する事。アナタは常にNBAに入るよりも居続ける方が大変だと言っていた。僕はアナタが僕の中に見たその信念をきっと証明してみせる。僕はアナタにプレーを見てもらって、「俺はやったぞ」って満足感を得ながらゆっくり座っていて欲しいんだ。そう、「俺たちはやったんだ」ってね。
世の中には幸運に恵まれず父という存在がないままの少年がたくさんいる事を知っている。それを乗り越えるのはとてもタフな事だろう。だから誰かがアナタについてどう思おうが、僕はアナタのような父を持てた事にとてつもない感謝の念を覚えるんだ。もし僕がアナタの影響なく育っていたら、自分が今いる所にはきっといないだろう。きっと、そうだと思う。
アナタも今まで楽な人生ではなかったはず。父が抱えた全て、そして捧げなければならなかった事。大人になってから僕と兄弟にトレーニングが何たるかを叩き込むために大半の時間を費やした、再びアナタと同じ困難を味わう事がないようにって。僕が父に望む事はもうこれ以上何も考えられないよ。
僕にバスケットボールを教えてくれて本当にありがとう。男はどうあるべきかを教えてくれてありがとう。そして、アナタがアナタである事を一度も謝らないでいてくれてありがとう。
お父さん、父の日おめでとう。
愛してるよ。
ロンゾ
完。
実際の所、ロンゾは父を嫌がるどころか正反対だったという事実。
世間では良いイメージが全くない状態と言えるラバーですが、彼もまた一人の家族思いの父である事には変わりなかったのです。
この手紙により彼のイメージが払拭され今までの発言も問題なし、となるわけではないですが、彼の存在を全否定するのはお門違いと言えるでしょう。
レイカーズは先日フランチャイズを背負っていくと思われていたディンアジェロラッセルをネッツに放出、このロンゾボールに未来を託す形となりましたが、果たして来季どんなプレーを見せてくれるのか、父の影響で膨れ上がったプレッシャーに打ち勝つ事が出来るのか。
彼ならきっと出来る。
全ては彼の偉大なる父、ラバーボールの計画通りのはずですから。
▼ロンゾボール – Welcome to Lakers▼
SOURCE : THEPLAYERS’ TRIBUNE
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